引き続き名郷先生の面談から,前回に引き続き「害」の話題です。
高カリウム血症という「害」を考えてみよう☆実臨床ではもっと多い
CQ4:腎障害患者でのRAA系阻害薬の併用療法はどこまで有効か?
で検索した,5件の論文について伺っていたときのことです。
― 高カリウム血症がこれだけ多いと,怖いですね。
↑臨床試験で良く出てくる有害事象ですね。血中カリウム値が上がるとなぜいけないのでしょうか。
― 不整脈の原因になって,突然死を起こす可能性があるからです。でも私が「怖い」と言っているのはそこではありません。ACE阻害薬/ARBに,スピロノラクトンを追加投与したメタ解析(PMID:19588415)でいうと,高カリウム血症のリスク比は3.06,95%信頼区間は1.26~7.41です。最大で高カリウム血症のリスクが7.41倍になるかもしれない。でも,実地臨床での高カリウム血症はもっと多いと考えた方がいいんです。
↑ ええと,以前伺ったお話では,たしか害のリスクは95%信頼区間の悲観的な数字を考慮する,ということでしたよね?今回,先生がさらに悲観的にとられているのはなぜでしょう。
― これは実際に起こったことなのですが,1999年にスピロノラクトンが重症心不全の死亡リスクを30%抑制するという劇的な結果が報告されたのですね(PMID:10471456)。この結果を受けて,スピロノラクトンは心不全治療薬としてまたたく間に実地診療に広まりました。ところが2003年に報告された観察研究で,スピロノラクトンが投与された患者の24%に高カリウム血症,25%に腎不全,3%に一時ペーシングが必要,といった有害事象が生じていたことが報告されたのです(PMID:12535810)。
↑ 思いがけないほど高い頻度の有害事象だったのですね。。臨床試験の段階でなぜ明らかにされなかったのでしょうか。
― 臨床試験では血清カリウム値を頻回にチェックしますが,日常臨床ではそうそうチェックしていられないですから。症状の目立った変化がなければ「Do」でいっちゃうんですね。それで気がついたら高カリウム血症の症状が出てしまった,というケースはいくらでもあるのです。
↑ 先生が「怖い」とおっしゃったのには,実地臨床では高カリウム血症を未然に防ぐことができにくい,という理由があったのですね。
※この内容は,本誌第3号に,詳細が掲載されています!ぜひご覧ください
次回の更新では・・・
『利益と害のバランスを論理的に考えよう☆考えるよりまずLHHを計算』
について紹介する予定です!
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