2015年6月12日金曜日

何を信じて何を疑えばいいですか?第6弾 ボンフェローニ補正「P<0.05が通用しない場合もある?!」

ボンフェローニ補正は,大まかにいうと
差がないのに差がある(αエラー)を避けるために,
検定回数で有意水準を割る補正方法。


P値に基づく統計手法では,偶然差が出る確率P値を計算し,その確率が5%すなわち0.05未満であれば有意差があると論じます。ただし,0.05という有意水準は1つの検定にしか適応できません。

なぜか。
例えば1つの研究でP値による検定を2回繰り返した場合,少なくともどちらかの検定に偶然有意差が出る確率は
1-0.95×0.95=0.10
約10%となります。同様に検定10回では少なくともいずれか1回の検定で偶然有意差が出てしまう確率は1-(0.95)10乗=0.40 で約40%!「差がないのに差があるとしてしまう(αエラー)」は,統計を繰り返せば繰り返すほど,増えてしまうことがわかります。

そこで有意水準(通常0.05)を検定回数で割り,補正することでαエラーを避けようというのがボンフェローニの補正です。


本誌5号掲載のCQ4:急性心筋梗塞における再灌流傷害を防ぐことは可能か? では,4つのアウトカムについて検討が行われた試験での有意水準を0.0125(0.05÷4)と考えた場合,試験結果がどのように解釈されるか について名郷先生に解説いただいています。

先ほどの考え方でいくと1-0.95×0.95×0.95×0.95=0.19 少なくともいずれか1回の検定で偶然有意差が出てしまう確率は約19%(結構高いですね~)。これを4で割ると4.8%程度となり,1つの仮説を有意水準0.05で検定するのと同等レベルの偶然の影響に補正できる というわけです。


編集部でもこのお話を伺ってから,文献を読むたびにボンフェローニの補正 のことを頭の片隅においておくようにしています。



・・・ただ,とても用いやすいボンフェローニの補正ですが,たくさんの補正の中でも厳しい補正法で「差があるのに差がないとしてしまう(βエラー)」を増やしてしまう可能性もあるとか。
さらにアウトカム同士が独立という前提のものでの計算であることにも注意が必要です(実際は死亡,心血管疾患,冠動脈血行再建術,,のようにそれぞれ度合は異なるにせよ関係しており,独立ではない)。


じゃあ,どうすればよいの・・・? とも思いますが,このような統計学的知識をもったうえで,多面的に結果をみていくことが大切 なようです。

(実際以前こんなことを勉強しました↓)
何を信じて何を疑えばいいですか? 第5弾:「有意差がない=無効」ほんとにそれでいいですか?


名郷先生は著書「ステップアップEBM実践ワークブック」で,有意水準0.05が直観的にどのくらいのものなのかについて,野球を例にとって解説されています。それによると,2チームどちらかが6連勝するまで対戦すれば,その確率は0.03125となり,0.05を下回るので,統計学的に両者に強さの有意差が認められる,とか・・・。
(この本のなかでは,さらに実際は一回一回の勝負の差(1-0なのか10-0なのか?)を考慮すると,どのように数字がみえてくるか についても解説されており,とてもわかりやすいです!)


●参考文献:
   ステップアップEBM実践ワークブック 名郷直樹著 南江堂
   CORE Journal循環器no.5 CQ4:急性心筋梗塞における再灌流傷害を防ぐことは可能か?